天然記念物や巨木等の紹介

島に残る奇木

三宅島 “神着(かみつき)の大ザクラ”

空から飛んできて根が地面に突き刺さったような形をしています

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樹齢不明 樹高6.5m 胸高周囲5.3m 根元周囲 4.1m 枝張11m

三宅島は東京から180kmほどの南方海上にある直径8kmほどの孤島です。島の全域が富士箱根伊豆国立公園に指定されています。島の中心に聳える雄山は噴火を繰り返しています。 2000年の大噴火で破壊された植生や昆虫相などの自然は、現在ダイナミックに日々刻々と遷移していると聞きます。

三宅島には東京都指定の天然記念物の“ビャクシン”、“堂山のシイ”そして“神着の大ザクラ”の3本が脈々と生き続け、いずれも特徴のある樹形となっています。
今回紹介する樹木は、“神着の大ザクラ”というオオシマザクラの奇形の古木(写真)です。 この大ザクラは、空のどこからか飛んできてこの神着の地に突き刺さって、今も生きているといったイメージを沸き立たせてくれる奇形の木です。

どうしてこのような形になったのか、これは、私の想像したこのサクラの履歴です。

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数百年前、三宅島の北端で一本のオオシマザクラの巨木が林縁で生きていました。

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周りの林が無くなったり環境が変化して、オオシマザクラの巨木は孤立木となりました。
風除けの無くなったこのサクラは台風や強い季節風で枝が折れついには幹までもが折れてしまいました。

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幹の折れ口から病気(腐朽病)が体を侵し、幹の内部は腐ってゆきます。
でも周りには生きた幹が残っているので新しい小さな枝が伸びていきます。

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枝が伸びて葉が沢山つくと、このサクラは折れた所から根(不定根)を出し始めました。
自分の腐った幹の内部をつたわって根は深く地面を目指します。
まるで植木鉢の中を根が伸びるように。
三宅島は雨が多いので、根の生育を助けます。

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折れた所から出てきた根地面に沢山の根が到達して自分を支えることができるようになるころ、
100年も前のことかもしれません。周りの親ともいうべき幹は腐り果てて跡形もなくなりました。
残って見えるのは、空中から出てきた根が地面に突き刺さっている姿です。

このような桜を見ていると、桜にはほかの樹木に比べて強烈であからさまな程の生き延ようとする意思があるように思えてなりません。わたくし達日本人が殊に桜を愛でる気持ちの中には、何かそれらに対する畏怖の念が自ずと含まれているのかも知れません。

緑の総合病院 院長 神庭正則

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