天然記念物や巨木等の紹介

樹木への旅 11月 善福寺のイチョウ

東京都港区

善福寺は、東京・港区の麻布十番から歩いて5分ほどのところにあって、天長元年(824)に空海が麻布山善福寺を開山したことによります。 当時その寺域は広く、山門は今の港区・虎ノ門にありました。 杉並区にある同名の善福寺は、もともとその奥の院があったところだそうです。

参道の脇には、都内では珍しい湧水があり、かつては清水がこんこんとわきだしていました。

写真のイチョウは、国指定天然記念物の”善福寺のイチョウ”です。 その昔、親鸞聖人が当地を訪れ、その際杖を地に刺したところ成木となった、とのいわれがあり、「祖師上人御杖銀杏樹」の石碑が立っています。

イチョウは元来、日本にはなかった樹木で、元禄時代に僧侶によって中国から持ち込まれたといわれています。 “イチョウ”とうい名も中国名の“ヤーチャオ”が転訛したもののようです。

この老イチョウは、戦災で幹や枝を大きく焼かれましたが、半世紀以上経った今、若木のようなみずみずしい枝葉を存分に伸ばし、かつての勇姿をしのばせています。

「木は、葉も与えるし、(中略)、水も与えるし、空気も澄んで与える。 そのかわり木というものには、長い命が与えられ、体が生き物の中で一番大きくなり、倒れるまで青春があると、毎年葉が出て花が咲く・・・」
「老樹の青春」(荒川秀雄著)という本の一節です。善福寺のイチョウには、老いてなお青春のまっただ中にあるといった風情があります。

昔から私は、長寿の樹木の生命をどのように考えてよいか迷っています。 数百年、数千年と生き続け、なお新しい根や葉を伸ばし続ける、倒れても株から新たな芽が出る・・・未来永劫生きてゆく・・・ 限界があるはずなのですが、そのような気がしてならないのです。不思議な生き物です。

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緑の総合病院 院長 神庭正則

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