天然記念物や巨木等の紹介

樹木への旅 7月 キノコと中井のエンジュ

神奈川県足柄上郡中井町

樹木を腐らせる張本人は、木材腐朽菌という“キノコ”の仲間です。 腐朽菌のほとんどは、落ち葉や枯れ枝、倒れて死んだ木などを栄養源にして生活しています。 しかし、この木材腐朽菌は生きた樹木の傷口などから入り込み、樹木の細胞を栄養にして育ちます。

何百年もの永い年月を生きてきた老木は、必ずと言ってよいほどこの菌に侵され、内部が空洞になっています。 神奈川県指定天然記念物の“中井のエンジュ”も例外ではありません。 根元から大枝の先まで木材腐朽菌に大きく侵されていました。

樹木の外科手術は、このような樹木に施こされるもので、菌の繁殖を止めることを目的の一つにしています。 木材腐朽菌が生育するためには水分、酸素、温度の三要素が必要で、一つでも欠けると生育できません。 このことを応用して、腐朽部分に硬質ウレタンを吹き付け、菌への水分や酸素の供給を遮断し、腐朽の進行を止めるというのが原理です。 1970年代にアメリカで始まったこの方法は、東京農工大学の故中村克也名誉教授によって日本に紹介されました。 しかし、密着性の高いウレタンとはいえ、生きた樹木内部は腐朽が複雑に入り込んでいるため、 水分や酸素の完全な遮断が難しいことから、一定の条件下でのみ利用されています。

“中井のエンジュ”は、平成2年に外科手術が施されました。マメ科のエンジュは、夏、黄緑色の小さな花をたくさんつけます。老いたこのエンジュもその可憐な花で彩られます。今頃は、真っ盛りのことでしょう。

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緑の総合病院 院長 神庭正則

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